商品構成とは何か

小売(リテール)における商品構成とは、商品が本来持つ可能性をより多く引き出すために、
classification(商品特性に基づく商品分類)において、バランス良く商品を配置することです。
商品が本来持つ可能性とは、商品自体が売れる可能性のほか、他商品と比較して演出できる売り場や店舗イメージ、ブランドなどがあります。

このような考え方において商品構成とは、独立した個別の商品を寄せ集めるのではなく、目的や考えに基づき商品をまとめ上げたものと言えます。
つまり、商品構成には目的や考え方に基づいた規律やバランスが反映されている必要があります。
リテールにおいては、商品決定やフェイシング、棚割りなどを取引先に任せてしまうと商品構成のバランスが崩れ、商品の様々な可能性が引き出しにくくなるケースがあります。

バイヤーやMDにおいては、商品構成によって何を実現しようとしているのかという点において、明確なプランを構築し、取引先にも周知させておくと計画がスムーズに進みます。

重要なことは、外部と内部の要因分析(SWOT分析等)を行ったうえで、目的を設定し、商品比率や特定アイテムの導入などの手段を決定するということです。
悪い例として、POSデータにおいて、売上や買い上げ個数が上位のものだけ残しその他は排除するというやり方は、特色が無くなり大手量販店との価格競争に負けてしまいます。
そのようにならないために、競合の特色や自店の状況を見極めて、売れ筋と見せ筋の比率、高額品と低価格品の比率、対象年齢別の商品比率、高回転率と低回転率の商品比率など、目的に即した項目を設定し、適切な比率を見極めることがポイントです。

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先ほどの話をまとめると、商品構成の意味とは、
・お客様に対し、意志と意図を表現するため
・効果的に売上をあげるため
 (どのような売れ方をするのかという商品特性を理解し、他商品との併売や陳列の工夫など、商品の可能性を引き出した売上を実現する)
・他商品との比較による、魅力の演出
 (価格帯の異なる製品を組み込ませることで、メイン商品を引き立たせることができる)

このような効果を引き出すことです。

マネジメント:自立した職務遂行能力を身に付けさせるには

部下を自立させ戦力化するには、2ステップ必要です。

 

仕事の目的と手段の違いを理解し、目的のため主体的に行動させる

仕事の目的は、企業の存在意義の達成や顧客への価値創出です。そのための手段を重要指標とし強制して管理することは、かなり早い段階で卒業させる必要があります。報告・連絡・相談の徹底(日毎報告MTGを組むなど)は、著しいスキル不足など社員に問題があるケースでは有効ですが、仕事の目的が手段に履き違えられるリスクが高まります。

仕事に対する熱意、やる気が感じられる部下であれば、多少不安が感じられるようでも、KPI管理は個人に任せてみましょう。
数値管理の目的や、方法論は初めに伝え、質問を受けた際に考え方のズレが感じられるようであれば指摘する程度のスタンスで丁度いいかと思います。

 

自ら考え、創造する力をコーチする

部下が、仕事のマニュアル的な要素をマスターし、仕事を行う目的のために行動を自主的に選択できるようになったのちは、課題解決のための手法を自ら構築できるようにトレーニングすることです。
トレーニングといっても、つきっきりで行うわけではなく、自ら思考し自らのなかにある答えに辿り着けるように導くことが大切です。

課題解決のため、自ら思考し創造する力には、3つの要素に分けることができます。
・課題を見つける力
・課題を解く力
・諦めない執着心
これらは、成功体験を積み「解決する楽しさや喜び」を感じさせることで、意識的な努力を自発的に促すことができます。

大切なことは、学んで得られた知識ではなく、学ぶことを通じて身につける知恵です。
それぞれ3つの要素において、トレーニングするポイントを説明します。

課題を見つける力
日頃から疑問を大切にする習慣の重要性を伝え、行動として促すことです。
例えば、業績評価とは別に、リーダーシップ評価という行動からなる評価項目を作成することも手です。周りを巻き込み発信する「疑問発露型」の人間が育つ組織を構築していきましょう。コミュニケーションを取る際は、なぜそう思うのかを数回繰り返し、深く考える癖を身につけさせることが有効です。人との対話、そして自らとの対話を繰り返すことで、課題を深く理解した上での要素の繋がりまで説明できるようにトレーニングされます。
すると、漠然とした「分からない」が、「何が問題なのかは理解しているがその答えが分からない」といったように、解決策がスムーズに思考しやすくなります。これらを繰り返し、知恵として身につけることで、力となります。

課題を解く力
課題が明確になっている前提ですが、まずは課題の要素を切り分けていきます。そのうえで、それぞれの要素について解決可能なものから策を講じ、残った要素(課題の核心)をみつけ、そこへの解決策構築に集中するように促しましょう。
解決できなかったとしても、改めて課題を見つけるところから繰り返すことで、どのような対処法が有効か想定できるようになり、変化球への対応力も増します。煮詰まってくるようでしたら、俯瞰したものの見方を教えることで、多角的なものの見方に発展するかもしれません。タイミングを見て働きかけていきましょう。

諦めない執着心
考えたうえでの結果として、成果が得られたという満足感と幸福感を感じてもらうことです。先ほどの2点「課題を見つける力」「課題を解く力」のプロセスを経て得られた高い成果に対しては、きっちりと良い評価を提示してください。
自分自身で思いつき、自分の判断で行動していると感じることが、人間の行動力を引き出す上でとても大切なことです。そのため、コーチングスタイルの指導がとても有効です。
また、成果がなかなか出ないとしても、自ら考えているようであれば、その時間は決して無駄にはなっていないと伝えることです。トライアンドエラーを繰り返した人間の方が、答えに深みがあり成果も持続しやすいためです。

そのうえで、ある程度成果が出せるようになってきたのちは、過去の成功体験にとらわれることなく、この3つの要素を繰り返せるように指導することも必要です。成功体験は体験という名の知識であり、大切なことはこのプロセス(知恵)であるということを、何度も伝えていくことが大切です。

パートナーシップの構築

メーカーの営業担当者は、バイヤーや量販店の成果や売上向上のために企画をたてて提案に訪れます。ただ、営業担当者としても会社の方針に沿った商品展開をすることで評価が高まる仕組みになっているため、メーカーが売りたい商品には予算もしっかり確保してあります。

相手メーカーの社運をかけた商品は、相手のリソースを使い売上を高められるチャンスがあるため基本的には導入すべきです。ただ、提案においてメーカーの準備が不十分だと感じられたなら、きっちりと要求すべきです。試食サンプルやマネキンでの宣伝販売、大きな企画モノの陳列キャンペーンや販促グッズなど、ヒト・モノ・カネなど全てが通常よりも出しやすくなっているはずです。

このタイミングにおいては、伝え方も大切です。要求するには結果を出さないと、相手の立場としても会社に掛け合いにくいので、良き協力者になってもらうためにも、ある程度の販売数字を約束してしまうのも一つの手です。相手の営業担当者が信頼できる人物なのであれば、社内評価を高め出世してもらいましょう。

力を入れて売ると決めた商品に対しては、商品の魅力を販売員の皆に伝えるだけでは足りません。心の底から本当に良いと思ってもらうことが大切です。
必ず使用してもらい、商品の良さを知ってもらうとともに、「何故その商品に力を入れるのか」「従来品や他メーカーの製品と何が違うのか」「この商品を売らなければ相手に損とまで思えるか」など、メーカーとバイヤーの想いを、心の琴線に触れられるように伝えるのです。

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POSデータから先の、現場視点を交えたオーダーメイドの提案

リテール分析シェア分析を行い、PI値などPOSデータを基にした提案は有効です。
ただ、POSデータからは現状の販売実績はみえますが、どんな陳列状況(棚割という意味ではなくフェイスアップや欠品対策が徹底されているかなど)になっているかは分からず、本来在庫があれば売れたであろうものなどの現実の販売データは実は分からないということを想像すべきです。

そのために、提案の際には、店舗をまわることが非常に大切です。
バイヤーとの交渉において、ハードな価格交渉を持ちかけられたとしても、「現場で安易な値下げを行っていないか、販売方法に改善の余地がないか」確認したうえで交渉に臨むと、売上原価を下げるため「納品価格を落とす」以外の方法が提案できるかもしれません。

そのためには、店舗をまわり状況を確認することは、暇を見つけていくのではなく規則的に行うととても有効です。
ベストは土日です。土日が販売量が最も多く、売上が高い日のオペレーションの現実がみえるためです。
商談の際に決定した棚割、売価、フェイシング数、品質など重要な項目が問題なく実行されているか確認しましょう。

そのうえで、数値データ(結果)を検証しプロセスや提案に活かすと、現実をふまえた課題解決ができ顧客満足→顧客の成功が実現に近づきます。

量販店の収益構造

量販店における売上高の要素と、会計の観点から把握すると理解がしやすいです。

まずは、リンクの内容を確認してください。
PL/BSの仕組み
リテール分析について

量販店のPLを分解すると、以下のように説明できます。
・売上高 - 商品経費(売上原価 + ロス・売価変更差額)= 粗利益高(営業利益 + 人件費 + その他経費)
・営業利益 =粗利益高 - 店舗運営に係わる経費(人件費 + その他経費)

ここでのポイントは、
・すべての店舗運営に係わる経費は、粗利益高から差し引かれること。つまり、この経費が少なくなれば営業利益が増える。
・粗利益高を多くするには、ロスと値下げによる売価変更と、売上原価を減少させること。
また、SM(スーパー)においては、営業利益率3%以上であればうまく経営できています。
売上原価の減少とは、販売価格の交渉時に価格を落とすということだけでなく「初めに設定した販売価格で商品を売り切る」「ロスが出ないように販売方法を工夫する」ことで、実際の売上原価を抑えることができます。現場で安易な値下げを行っていないか、販売方法に改善の余地がないか確認したうえで交渉に臨むと新しい発見が見つかるかもしれません。

売上高を増加させるためには、
・客数(利用頻度 × 来店客の絶対数)の増加
・客単価の向上
・商品単価の向上
・買い上げ点数の増加
以上の点を考える必要がありますが、ここに量販店の強みや方針、対する悩みが現れます。全てを増やすことはなかなか難しいので、どのような戦略・戦術を考えているのか確認し助言や提案を行っていきましょう。

シェア分析・数値管理手法

顧客のインストアシェアを向上させるためには、適切なマーケットシェア分析を行うことが必要です。

まず、市場シェア、国内シェア、世界シェアなど必要な市場規模を決めたうえで、
金額や販売数などの計算値の基準を明確にします。
そして、ショッパーへの付加価値や嗜好性の分析を基にした、本当の競合製品は何なのかといった市場の再定義を行いましょう。

例えば、飲料のレッドブルにおいては、缶飲料のカテゴリにおいては数%シェアですが、エナジードリンクのカテゴリにおいては圧倒的な強者です。極端な例ですが、見方を変えると自社商品の強みが発見できます。どのような消費者に自社商品が好まれているかを様々な角度から検証し、適切な市場を再定義してください。そして、その市場規模と今後の展望も含めた数値も用意できると尚いいです。
また、シェアにより量販店に対する交渉力が大きく変わってきます。10−15%のシェアで交渉力を保って商品展開できるレベルです。20%を超えてくると競合他社製品も含めたカテゴリーマネジメントを提案できる可能性が見えてきます。40%を越えると、カテゴリーのスタンダードと呼べる立ち位置ですので、優位性を保って交渉に臨めます。ただ、新たに製品のカテゴリーそのものを食ってしまうような商材やカテゴリーが現れる可能性がありますので、慢心は危険です。

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次に、シェア分析を行ったうえで、顧客のインストアシェアを向上させる手法についてです。
自社商品のマーケットシェアと顧客におけるインストアシェアを確認しましょう。顧客におけるインストアシェアがマーケットシェアよりも低い場合は、ここを上げることが最優先課題です。

そのうえで、インストアシェアが低い要因を探ります。
「似た特性を持つ競合製品が売れている」「棚割りで優位な場所を競合に占拠されている」「競合製品の会社のバックアップが強い(社運をかけた製品展開など)」など、
様々な要因が考えられますが、自社商品をSWOT分析し効果的な提案を継続して行うことで通常は解決できるはずです。
自社商品のインストアシェア拡大のための最も手軽で効果的な手法は、自社製品と同様の特性を持ち売り場での貢献度が劣っている競合製品を、売り場から外すように提案することです。
また、自社商品がマーケットシェアにおいても優位性が保てているのであれば、取り扱わないことによるデメリットは理解してもらいやすいでしょう。

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自社商品の売上高において、それぞれの顧客(量販店)別の売上比率がいびつになっていないか、営業Mgrは注意すべきです。
ある特定の顧客(量販点)に売上が偏ってしまっていると、交渉の際にシビアな価格交渉を強いられるリスクが高まるためです。大きな取引先であっても、会社の売上の15%以上を握られるような取引は慎重に行いましょう。こういった状況に陥ることを避けるためには、
・他社にマネのできない商品を作る(高い技術力、特許で法的なバリアを作る、など)
・他の顧客での売上高を増やす
といった方法でしか対処できません。取引をやめるという方法もありますが、あまり現実的ではないでしょう。

バイヤーにとっては、自らの強みを活かした交渉を進めていくために、カテゴリにおけるメーカーの優先順位付けを行っています。
先ほどの売上比率が特定の企業に偏ることによる、交渉力の低下は量販店においてもあてはまります。
トップシェアのメーカーであってもシェアが15-20%程度で、シェアの高いメーカー3-5社の力が拮抗している状態であれば、量販店のバイヤーは優位性を保って交渉を進めることができます。商品の替えが効きやすい状況にあるためです。ただ、主要メーカーが少なく、トップシェアの企業が半分程度シェアを持っている状況となると、バイヤーは交渉に苦労します。このような状況においては、2番手や3番手のメーカーは自社商品を利用してトップシェアの企業の影響力を低下させましょうという提案は有効的です。

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リテール分析手法(基礎)

小売店・量販店において
◎売上拡大のために、課題となっている点は何か
を把握するための、分析手法の説明をします。

これらを活用することで、
◎小売店・量販店において、課題を客観的に判断できる数値をベースにすることで、適切な解決策を見つけ出すこと
◎小売店・量販店を対象としたメーカーの営業活動において、納得度の高い提案に繋げること
◎小売店・量販店を対象としたメーカーの営業活動において、顧客の市場分析に活かすこと
ができるようになります。

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目的は「売上拡大のために課題となっている点を把握するため」なので、
”売上”を因数分解すると課題としての要素がみえてきます。

・売上高=客数 × 客単価
売上高とは、ある一定期間内の売上金額です。
量販店の地域やブランディングの特性によって、どちらが解決すべき課題として重要か確認したうえで、さらに要素を細分化します。

・客数 =利用客数 × 来店頻度
・客単価=単品単価 × 買上品数
先ほどと同様に特性を理解したうえで分解するとともに、エリアの特性や競合の取り組みをふまえ、「顧客の強みを活かし、ベンチマークしている競合店のお客様を呼べるような商品施策」が求められます。

このような見方もできます。
・売上高=商品回転率 × 平均在庫高
商品回転率は、仕入れがショッパーのニーズにマッチしているか、前出しやPOPなどのプロモーションや鮮度維持に課題がないか確認できます。
平均在庫高は、売れていない商品をストックしてあることを意味し、フォーキャスティングや仕入れ基準、販売体制に課題がないか確認できます。
量販店ではこれらの分析を経て、加工陳列や人員オペレーションを行なっています。

先ほどの公式を基に、次のように言い換えることができます。
・商品回転率=売上高 ÷ 平均在庫高
・平均在庫高=(期首の在庫高 + 期末の在庫高)

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次に、利益とコストの観点から要素を分けていきます。
・売上高=粗利益高 + 売上高原価

・売上高原価 = 期首の棚卸し高(原価) + 当期の商品仕入高(原価) − 期末の棚卸し高(原価)
棚卸し高とは、原材料、仕掛品、商品などの数量と金額を計算した価値です。
期首の棚卸し高とは、資産として繰り越された前期末に売れ残っていた商品の原価です。期末の棚卸し高については、今期末に残っている商品の原価です。

・粗利益率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100
売上高における粗利益高の割合を指します。
「顧客の粗利益率」「担当カテゴリの粗利益率」「自社商品の粗利益率」を知ることで、粗利益高を最大化するための方法を構築することができます。

粗利益率は商品ごとに異なります。
商品回転率が売りで粗利益率が低いものもあれば、粗利益率は高いものの売れる数が少ない商品もあります。そこで、どの組み合わせが粗利益高を最大化できるのかといった粗利ミックスを考慮します。カテゴリーマネジメントの際には、売れ筋の売価を抑えた商品は割合は少なくしつつも残し、それに関連付けられるような嗜好品や売価が多少高くても売れる粗利益率の高い商品を組み込むといいでしょう。

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利益と物量の双方の視点から、売上を構成する要素を説明しました。
次に、これらをかけ合わせて数値をみることで、商材の影響力を測ることができます。

・交差(主義)比率 = 商品回転率 × 粗利益率
この数値が高ければ、商材の売上に対する影響度が大きいといえ、同時に投資効率が高いといえます。これらをある一定の基準で設定している量販店もあるかと思います。この数値は、商品が売れ残っている際や、逆に品薄となっている際に、粗利益率を調整する際の指標として用いられます。
自社と競合の数字を確認するとともに、期首と期末での在庫高の調整額に気をつけましょう。ここの乖離が影響して、商品回転率に影響が出るケースがあるようです。

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次に、売上から粗利、それに伴うヒトに関する費用割合についてです。

・労働分配率 = 総人件費 ÷ 粗利益高
粗利益高のうちの人件費の割合です。
リテール企業においては40%以下が望ましいようです。
この割合が低ければ低いほど、企業体力の強い会社といえます。
同時に競争力の高い企業ですので、交渉力も高いようです。

・人時生産性 = 粗利益高 ÷ 総労働時間
・人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
従業員1人あたりの労働で、どれだけ粗利益高・売上高を高めることができたかという指標です。
リテール企業においては、全社で人時生産性5,000円・人時売上高18,000円が目安といわれています。この数値は高ければ高いほど強い店舗といえます。
全社と付け加えましたが、会社全体の本部スタッフも含めて計算する必要があります。

・従業員1人あたりの売上高 = 売上高 ÷ 従業員数(8時間勤務として)
販売力を示す指標です。市場での評価が高く、採用していない商材を取り入れることで向上させることが可能です。

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次に、売上と店舗コストの相関値です。

・坪効率 = 売上高 ÷ 売り場面積(坪)
この数値が高まれば営業利益率が高まります。この数値が増加傾向にあれば、増床を検討すべきですが、店舗の家賃と費用対効果を検討する必要があります。競争が激しい地域では、この数値は低下します。そういったケースにおいては、人件費を削るために店舗内のオペレーション効率を高められる商材を求めるケースがあります。

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また、POSデータでの計算で取得しているPI値についてです。

・PI値 = 特定期間の単品販売数量 ÷ 特定期間のレジ通過客数
PI値とは購買発生率(Purchase Incidence)の略称です。
通常、こちらの値が高い商品は、販売数量の増加に対する貢献度が高い商品といえます。ただ、POSデータ(PI値)からは現状の販売実績はみえますが、陳列状況まではわからず、本来在庫があれば売れたであろうもののデータは見えないことも想定すべきです。そのため、PI値と商品だけを関連付けるのではなく、POPや前出しによるプロモーションや、トレンドや販売手法など多角的な視点を持った上でPI値を分析しましょう。

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以上が基本的な売上高に紐づく要素ですが、改善に取り組む際はあくまで、収益向上を目的とした施策を打ち出すことです。
顧客の課題解決から先の、顧客の成功を目的とした提案においては、より深い情報収集→分析が必要となります。

基本編:BS/PLの仕組み

経営の実行プロセスである組織マネジメントにおいて、その要素である経営資源は大きく「ヒト、モノ、カネ、情報」に分けることができます。その経営資源の全体像である経営を捉えるうえで、会計は有効なツールの一つです。
つまりどのような仕事を行ううえであっても、企業活動の全体像を捉える必要がある際は、会計というツールを活かすことは意味が大きいと言えます。

また、4つの経営資源には、短期的に企業に流入しては流出する「フロー資源」と長期的に繰り返して使い続ける「ストック資源」があります。
フロー資源には、原材料や製品、外注サービスや利益配分などが含まれます。ストック資源には、人材や資金、設備や技術などが含まれます。
事業活動を開始する際に持っているストック資源を、事業期末に増やすことができていれば(お金の量を増やせた、従業員の仕事の能力が向上した、など)、企業が成長したと判断できます。
ストック資源を増やすために、フロー資源が投入されます。フロー活動とは、ストック資源を得るための事業期間における事業プロセスです。

「企業の目的は、利益を稼ぐこと」ですが、上記の説明をふまえると「どの経営資源を重視するかは別にして、企業はストック資源の質量を増やすことを目的としている」と言い換えることができます。どのストック資源を重視し企業活動を行うかは、経営者の考えにより異なってきます。

ここで、BS/PLについての説明です。
BS(バランスシート、貸借対照表)
→残ったストック資源、フロー活動の結果であるストック
PL(Profit & Loss Statement、損益計算書)
→ストックを増やすため、期中の儲けを示すフロー

これらをカネという尺度でリスト化したものが、財務諸表(ここでいうBS/PL)です。ヒトについてはストック資源ではあるものの、企業の所有物ではないということで、BSではなく人件費としてPLに記載されます。同様に、ノウハウや技術といった情報資源についても、ヒトに依存する場合はBSに記載されません。ただ、特許やライセンスといった形で資産計上できる場合はBSに記載されます。

BSには、「総資産」、「総負債」、そしてその差額である「資本」が記載されます。総資産は「流動資産(現金)」、「固定資産(建物や車)」と2つに分けて記載します。総負債においても、「流動負債(一時的な借金)」、「固定負債(社債やローン)」と2つに分けます。
資産であるストック資源から、負債であるストック資源を引いた資本を、要素ごとにわかりやすく判断するための表がBSです。

PLとは、ストックを増やすためのBSの期首と期末の期間における儲けを示すフローリストと説明しました。期間における「売上ー経費=利益」を、要素ごとにわかりやすく判断するための表がPLです。
営業活動における売上から、経費を引いた数字が営業利益です。そこに、営業外で得た利益(株や土地収入など)を加えた数字が経常利益です。そこから、税金などの費用を引いた額が、純利益となります。

この要素の数字の大きさやバランスに注目し意味を理解することが、会計というツールを使いこなす上で重要なポイントです。
次回は、職種ごとの会計ツールの活かし方についてお伝えします。

仕事や面接で必要とされるコミュニケーション手法 OSCD

コミュニケーション力についての議論となると、話し方や伝え方の巧拙がよく取り沙汰されますが、それよりも重要なことがあります。最も重要なことは「いかに本質的な情報を伝え合うか」です。そのためには関係者と課題が共有されていることが大切です。つまり、仕事や面接など組織や利害関係者との共同の取り組みにおいては、事前準備が成果を分ける大きなポイントとなります。

面接においては、自分をPRすることよりも、先方の企業の課題や募集背景を把握したうえで、自らの仕事の目的と照らし合わせ「仮説を立てて」対話に望むことが相手との理解を深め合うポイントです。

ビジネスコミュニケーションにおける有効な手法の一つとして、OSCD(プロジェクト目標)と呼ばれる事前準備の方法があります。OSCDとは、目的(O)、成功基準(S)、前提となる条件(C)、成果物(D)の頭文字からなる略語です。
この手法の有効性のポイントは、プロジェクトの背景がストーリーとして関係者に周知されるため、スタートからゴールまでの道筋を強くイメージしながら動くことで仕事の成功率が上がることです。
これらの一連の流れは、「本質的な情報を伝え合う」ための手法として活用してください。

例えば、営業部において課を新設するというプロジェクトをあなたが担ったとします。そこで、なぜ営業部において課を新設しなければならないのかストーリーを作成し、全体としてのバリューを考慮しましょう。そのうえで、関係者それぞれにとっての意義や価値を見出し、事前に対話を行ってください。

それぞれの項目ごとの具体的な例として、
目的(O)には、顧客サービスの質の向上、売上拡大、人員育成などが挙げられます。その上で、客観的に判断できる成功基準(S)を設け、目的(O)達成のため犠牲になってはならない前提条件(C)を設定します。例えば、課を新設するにあたってかかる初期コストは1年で回収し決算に影響は出さない、などです。
そのうえで、成果物(D)をそれぞれの関係者に共感出来るように設定します。
プロジェクト遂行にあたっては、プロジェクトスタート前に関係各所に共感が得られるようスケジューリングし、関係者を得意分野にアサインした上で進められるように出来ればベストです。

この時点までで、共感が得られていない人物がいる場合、理由は2つです。その人物があなたの話の内容を理解できていないか、関係者の利害と対立しているかのどちらかです。対応としては、説得を試みるのではなく、目的と課題の共有、そしてその優先順位についての相互理解、本質的な価値についての対話など、「深く」コミュニケーションを行うことで解決に近づくかと思います。

それぞれ、立場や個性によって仕事の目的や捉え方が異なるので、相手の言葉をそのまま受け止めるのではなく、こちらから深く投げかけることで相互理解が深まるということを想像してください。そのうえで、事前に相手の置かれている状況や考えについての仮説が立てられていれば、より本質的な対話ができます。