コミュニケーション力についての議論となると、話し方や伝え方の巧拙がよく取り沙汰されますが、それよりも重要なことがあります。最も重要なことは「いかに本質的な情報を伝え合うか」です。そのためには関係者と課題が共有されていることが大切です。つまり、仕事や面接など組織や利害関係者との共同の取り組みにおいては、事前準備が成果を分ける大きなポイントとなります。
面接においては、自分をPRすることよりも、先方の企業の課題や募集背景を把握したうえで、自らの仕事の目的と照らし合わせ「仮説を立てて」対話に望むことが相手との理解を深め合うポイントです。
ビジネスコミュニケーションにおける有効な手法の一つとして、OSCD(プロジェクト目標)と呼ばれる事前準備の方法があります。OSCDとは、目的(O)、成功基準(S)、前提となる条件(C)、成果物(D)の頭文字からなる略語です。
この手法の有効性のポイントは、プロジェクトの背景がストーリーとして関係者に周知されるため、スタートからゴールまでの道筋を強くイメージしながら動くことで仕事の成功率が上がることです。
これらの一連の流れは、「本質的な情報を伝え合う」ための手法として活用してください。
例えば、営業部において課を新設するというプロジェクトをあなたが担ったとします。そこで、なぜ営業部において課を新設しなければならないのかストーリーを作成し、全体としてのバリューを考慮しましょう。そのうえで、関係者それぞれにとっての意義や価値を見出し、事前に対話を行ってください。
それぞれの項目ごとの具体的な例として、
目的(O)には、顧客サービスの質の向上、売上拡大、人員育成などが挙げられます。その上で、客観的に判断できる成功基準(S)を設け、目的(O)達成のため犠牲になってはならない前提条件(C)を設定します。例えば、課を新設するにあたってかかる初期コストは1年で回収し決算に影響は出さない、などです。
そのうえで、成果物(D)をそれぞれの関係者に共感出来るように設定します。
プロジェクト遂行にあたっては、プロジェクトスタート前に関係各所に共感が得られるようスケジューリングし、関係者を得意分野にアサインした上で進められるように出来ればベストです。
この時点までで、共感が得られていない人物がいる場合、理由は2つです。その人物があなたの話の内容を理解できていないか、関係者の利害と対立しているかのどちらかです。対応としては、説得を試みるのではなく、目的と課題の共有、そしてその優先順位についての相互理解、本質的な価値についての対話など、「深く」コミュニケーションを行うことで解決に近づくかと思います。
それぞれ、立場や個性によって仕事の目的や捉え方が異なるので、相手の言葉をそのまま受け止めるのではなく、こちらから深く投げかけることで相互理解が深まるということを想像してください。そのうえで、事前に相手の置かれている状況や考えについての仮説が立てられていれば、より本質的な対話ができます。