商品構成とは何か

小売(リテール)における商品構成とは、商品が本来持つ可能性をより多く引き出すために、
classification(商品特性に基づく商品分類)において、バランス良く商品を配置することです。
商品が本来持つ可能性とは、商品自体が売れる可能性のほか、他商品と比較して演出できる売り場や店舗イメージ、ブランドなどがあります。

このような考え方において商品構成とは、独立した個別の商品を寄せ集めるのではなく、目的や考えに基づき商品をまとめ上げたものと言えます。
つまり、商品構成には目的や考え方に基づいた規律やバランスが反映されている必要があります。
リテールにおいては、商品決定やフェイシング、棚割りなどを取引先に任せてしまうと商品構成のバランスが崩れ、商品の様々な可能性が引き出しにくくなるケースがあります。

バイヤーやMDにおいては、商品構成によって何を実現しようとしているのかという点において、明確なプランを構築し、取引先にも周知させておくと計画がスムーズに進みます。

重要なことは、外部と内部の要因分析(SWOT分析等)を行ったうえで、目的を設定し、商品比率や特定アイテムの導入などの手段を決定するということです。
悪い例として、POSデータにおいて、売上や買い上げ個数が上位のものだけ残しその他は排除するというやり方は、特色が無くなり大手量販店との価格競争に負けてしまいます。
そのようにならないために、競合の特色や自店の状況を見極めて、売れ筋と見せ筋の比率、高額品と低価格品の比率、対象年齢別の商品比率、高回転率と低回転率の商品比率など、目的に即した項目を設定し、適切な比率を見極めることがポイントです。

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先ほどの話をまとめると、商品構成の意味とは、
・お客様に対し、意志と意図を表現するため
・効果的に売上をあげるため
 (どのような売れ方をするのかという商品特性を理解し、他商品との併売や陳列の工夫など、商品の可能性を引き出した売上を実現する)
・他商品との比較による、魅力の演出
 (価格帯の異なる製品を組み込ませることで、メイン商品を引き立たせることができる)

このような効果を引き出すことです。

パートナーシップの構築

メーカーの営業担当者は、バイヤーや量販店の成果や売上向上のために企画をたてて提案に訪れます。ただ、営業担当者としても会社の方針に沿った商品展開をすることで評価が高まる仕組みになっているため、メーカーが売りたい商品には予算もしっかり確保してあります。

相手メーカーの社運をかけた商品は、相手のリソースを使い売上を高められるチャンスがあるため基本的には導入すべきです。ただ、提案においてメーカーの準備が不十分だと感じられたなら、きっちりと要求すべきです。試食サンプルやマネキンでの宣伝販売、大きな企画モノの陳列キャンペーンや販促グッズなど、ヒト・モノ・カネなど全てが通常よりも出しやすくなっているはずです。

このタイミングにおいては、伝え方も大切です。要求するには結果を出さないと、相手の立場としても会社に掛け合いにくいので、良き協力者になってもらうためにも、ある程度の販売数字を約束してしまうのも一つの手です。相手の営業担当者が信頼できる人物なのであれば、社内評価を高め出世してもらいましょう。

力を入れて売ると決めた商品に対しては、商品の魅力を販売員の皆に伝えるだけでは足りません。心の底から本当に良いと思ってもらうことが大切です。
必ず使用してもらい、商品の良さを知ってもらうとともに、「何故その商品に力を入れるのか」「従来品や他メーカーの製品と何が違うのか」「この商品を売らなければ相手に損とまで思えるか」など、メーカーとバイヤーの想いを、心の琴線に触れられるように伝えるのです。

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店頭の状況把握・企画立案

☆店舗を有する形態のリテールバイヤーを想定した内容です。

・店頭状況を把握するうえで先ず心掛けなければならないことは、PI値は過去の行動の結果でしかないとこうことです。PI値からは現状の販売実績はみえますが、どんな陳列状況(棚割という意味ではなくフェイスアップや欠品対策が徹底されているかなど)になっているかは分からず、本来在庫があれば売れたであろうものなどの現実の販売データは実は分からないのです。

そのため、店頭の状況をなるべく正確に把握するために、規則的に店頭状況を確認しましょう。販売量の多い土日は、オペレーションの課題が露見しやすいので土日は優先的に確認すべきです。

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◎確認すべき基本的な要素
【商品情報の基本要素】
・メイン商品、新商品、強化商品の打ち出し方
・主力商品と関連商品のクロスMDの取り組み方
・販促のレベル(POP内容やイベントの分かり易さや目を引く面白さ)
・品切れや欠品、死に筋商品へのスタッフの対応の細かさ
・売数に適した棚割りや陳列量になっているか
・汚れやホコリなどの衛生面

【店舗オペレーション情報の基本要素】
・販売員の目標把握度合い(業務内容から先の、予算や仕事の意味の理解度)
・マニュアル内容の徹底度
・前進立体陳列、フェイスアップの徹底度
・備品やゴミの管理
・レジの対応力
・人員配置(臨機応変さや費用対効果などが適正か、工夫がなされているか)

商品情報を確認する際には、バックヤードのチェックも必要です。
「品質や鮮度、納入期限が当初決められた通りに入荷しているか」「物量やサイズなど、ラベリングも含めて問題ないか」など、品質や物量に問題が発生した時に、どのタイミングで原因が発生し得たのかはっきりさせることが大切です。

店舗オペレーション情報を確認する際には、設定と違う販売状況になっていることが原因で、想定と違うPI値が出ていないかイメージを膨らませながらチェックを行うと効果的です。一度、商品を手にしたにもかかわらず、購入をしなかったお客様には理由を確認してみることも有効です。
また、商品が陳列棚に存在しているにもかかわらず、整理状態が悪く手に取ることができない状態や、売価が見えない状況になっているとしたら、結果的に品切れのような状況になってしまっています。店内物流や店内作業の改善においても、バイヤーから提案できる余地は多くあります。

販売スタッフや店長、売場Mgrとコミュニケーションを取る際は、商品の魅力を具体的な使用用途と絡めて伝える「伝達力」がとても大事です。
お客様が購入(使用)する前に、使用するメリットをイメージ付けられるような店頭POPや商品説明をスタッフに行ってもらわなければなりません。売り文句は、スタッフが明確な使用用途をイメージし、自ら使ってみたいという動機が産まれていないとなかなか成果には結びつかないようです。

量販店の収益構造

量販店における売上高の要素と、会計の観点から把握すると理解がしやすいです。

まずは、リンクの内容を確認してください。
PL/BSの仕組み
リテール分析について

量販店のPLを分解すると、以下のように説明できます。
・売上高 - 商品経費(売上原価 + ロス・売価変更差額)= 粗利益高(営業利益 + 人件費 + その他経費)
・営業利益 =粗利益高 - 店舗運営に係わる経費(人件費 + その他経費)

ここでのポイントは、
・すべての店舗運営に係わる経費は、粗利益高から差し引かれること。つまり、この経費が少なくなれば営業利益が増える。
・粗利益高を多くするには、ロスと値下げによる売価変更と、売上原価を減少させること。
また、SM(スーパー)においては、営業利益率3%以上であればうまく経営できています。
売上原価の減少とは、販売価格の交渉時に価格を落とすということだけでなく「初めに設定した販売価格で商品を売り切る」「ロスが出ないように販売方法を工夫する」ことで、実際の売上原価を抑えることができます。現場で安易な値下げを行っていないか、販売方法に改善の余地がないか確認したうえで交渉に臨むと新しい発見が見つかるかもしれません。

売上高を増加させるためには、
・客数(利用頻度 × 来店客の絶対数)の増加
・客単価の向上
・商品単価の向上
・買い上げ点数の増加
以上の点を考える必要がありますが、ここに量販店の強みや方針、対する悩みが現れます。全てを増やすことはなかなか難しいので、どのような戦略・戦術を考えているのか確認し助言や提案を行っていきましょう。

リテール分析手法(基礎)

小売店・量販店において
◎売上拡大のために、課題となっている点は何か
を把握するための、分析手法の説明をします。

これらを活用することで、
◎小売店・量販店において、課題を客観的に判断できる数値をベースにすることで、適切な解決策を見つけ出すこと
◎小売店・量販店を対象としたメーカーの営業活動において、納得度の高い提案に繋げること
◎小売店・量販店を対象としたメーカーの営業活動において、顧客の市場分析に活かすこと
ができるようになります。

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目的は「売上拡大のために課題となっている点を把握するため」なので、
”売上”を因数分解すると課題としての要素がみえてきます。

・売上高=客数 × 客単価
売上高とは、ある一定期間内の売上金額です。
量販店の地域やブランディングの特性によって、どちらが解決すべき課題として重要か確認したうえで、さらに要素を細分化します。

・客数 =利用客数 × 来店頻度
・客単価=単品単価 × 買上品数
先ほどと同様に特性を理解したうえで分解するとともに、エリアの特性や競合の取り組みをふまえ、「顧客の強みを活かし、ベンチマークしている競合店のお客様を呼べるような商品施策」が求められます。

このような見方もできます。
・売上高=商品回転率 × 平均在庫高
商品回転率は、仕入れがショッパーのニーズにマッチしているか、前出しやPOPなどのプロモーションや鮮度維持に課題がないか確認できます。
平均在庫高は、売れていない商品をストックしてあることを意味し、フォーキャスティングや仕入れ基準、販売体制に課題がないか確認できます。
量販店ではこれらの分析を経て、加工陳列や人員オペレーションを行なっています。

先ほどの公式を基に、次のように言い換えることができます。
・商品回転率=売上高 ÷ 平均在庫高
・平均在庫高=(期首の在庫高 + 期末の在庫高)

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次に、利益とコストの観点から要素を分けていきます。
・売上高=粗利益高 + 売上高原価

・売上高原価 = 期首の棚卸し高(原価) + 当期の商品仕入高(原価) − 期末の棚卸し高(原価)
棚卸し高とは、原材料、仕掛品、商品などの数量と金額を計算した価値です。
期首の棚卸し高とは、資産として繰り越された前期末に売れ残っていた商品の原価です。期末の棚卸し高については、今期末に残っている商品の原価です。

・粗利益率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100
売上高における粗利益高の割合を指します。
「顧客の粗利益率」「担当カテゴリの粗利益率」「自社商品の粗利益率」を知ることで、粗利益高を最大化するための方法を構築することができます。

粗利益率は商品ごとに異なります。
商品回転率が売りで粗利益率が低いものもあれば、粗利益率は高いものの売れる数が少ない商品もあります。そこで、どの組み合わせが粗利益高を最大化できるのかといった粗利ミックスを考慮します。カテゴリーマネジメントの際には、売れ筋の売価を抑えた商品は割合は少なくしつつも残し、それに関連付けられるような嗜好品や売価が多少高くても売れる粗利益率の高い商品を組み込むといいでしょう。

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利益と物量の双方の視点から、売上を構成する要素を説明しました。
次に、これらをかけ合わせて数値をみることで、商材の影響力を測ることができます。

・交差(主義)比率 = 商品回転率 × 粗利益率
この数値が高ければ、商材の売上に対する影響度が大きいといえ、同時に投資効率が高いといえます。これらをある一定の基準で設定している量販店もあるかと思います。この数値は、商品が売れ残っている際や、逆に品薄となっている際に、粗利益率を調整する際の指標として用いられます。
自社と競合の数字を確認するとともに、期首と期末での在庫高の調整額に気をつけましょう。ここの乖離が影響して、商品回転率に影響が出るケースがあるようです。

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次に、売上から粗利、それに伴うヒトに関する費用割合についてです。

・労働分配率 = 総人件費 ÷ 粗利益高
粗利益高のうちの人件費の割合です。
リテール企業においては40%以下が望ましいようです。
この割合が低ければ低いほど、企業体力の強い会社といえます。
同時に競争力の高い企業ですので、交渉力も高いようです。

・人時生産性 = 粗利益高 ÷ 総労働時間
・人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
従業員1人あたりの労働で、どれだけ粗利益高・売上高を高めることができたかという指標です。
リテール企業においては、全社で人時生産性5,000円・人時売上高18,000円が目安といわれています。この数値は高ければ高いほど強い店舗といえます。
全社と付け加えましたが、会社全体の本部スタッフも含めて計算する必要があります。

・従業員1人あたりの売上高 = 売上高 ÷ 従業員数(8時間勤務として)
販売力を示す指標です。市場での評価が高く、採用していない商材を取り入れることで向上させることが可能です。

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次に、売上と店舗コストの相関値です。

・坪効率 = 売上高 ÷ 売り場面積(坪)
この数値が高まれば営業利益率が高まります。この数値が増加傾向にあれば、増床を検討すべきですが、店舗の家賃と費用対効果を検討する必要があります。競争が激しい地域では、この数値は低下します。そういったケースにおいては、人件費を削るために店舗内のオペレーション効率を高められる商材を求めるケースがあります。

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また、POSデータでの計算で取得しているPI値についてです。

・PI値 = 特定期間の単品販売数量 ÷ 特定期間のレジ通過客数
PI値とは購買発生率(Purchase Incidence)の略称です。
通常、こちらの値が高い商品は、販売数量の増加に対する貢献度が高い商品といえます。ただ、POSデータ(PI値)からは現状の販売実績はみえますが、陳列状況まではわからず、本来在庫があれば売れたであろうもののデータは見えないことも想定すべきです。そのため、PI値と商品だけを関連付けるのではなく、POPや前出しによるプロモーションや、トレンドや販売手法など多角的な視点を持った上でPI値を分析しましょう。

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以上が基本的な売上高に紐づく要素ですが、改善に取り組む際はあくまで、収益向上を目的とした施策を打ち出すことです。
顧客の課題解決から先の、顧客の成功を目的とした提案においては、より深い情報収集→分析が必要となります。