マネジメント:自立した職務遂行能力を身に付けさせるには

部下を自立させ戦力化するには、2ステップ必要です。

 

仕事の目的と手段の違いを理解し、目的のため主体的に行動させる

仕事の目的は、企業の存在意義の達成や顧客への価値創出です。そのための手段を重要指標とし強制して管理することは、かなり早い段階で卒業させる必要があります。報告・連絡・相談の徹底(日毎報告MTGを組むなど)は、著しいスキル不足など社員に問題があるケースでは有効ですが、仕事の目的が手段に履き違えられるリスクが高まります。

仕事に対する熱意、やる気が感じられる部下であれば、多少不安が感じられるようでも、KPI管理は個人に任せてみましょう。
数値管理の目的や、方法論は初めに伝え、質問を受けた際に考え方のズレが感じられるようであれば指摘する程度のスタンスで丁度いいかと思います。

 

自ら考え、創造する力をコーチする

部下が、仕事のマニュアル的な要素をマスターし、仕事を行う目的のために行動を自主的に選択できるようになったのちは、課題解決のための手法を自ら構築できるようにトレーニングすることです。
トレーニングといっても、つきっきりで行うわけではなく、自ら思考し自らのなかにある答えに辿り着けるように導くことが大切です。

課題解決のため、自ら思考し創造する力には、3つの要素に分けることができます。
・課題を見つける力
・課題を解く力
・諦めない執着心
これらは、成功体験を積み「解決する楽しさや喜び」を感じさせることで、意識的な努力を自発的に促すことができます。

大切なことは、学んで得られた知識ではなく、学ぶことを通じて身につける知恵です。
それぞれ3つの要素において、トレーニングするポイントを説明します。

課題を見つける力
日頃から疑問を大切にする習慣の重要性を伝え、行動として促すことです。
例えば、業績評価とは別に、リーダーシップ評価という行動からなる評価項目を作成することも手です。周りを巻き込み発信する「疑問発露型」の人間が育つ組織を構築していきましょう。コミュニケーションを取る際は、なぜそう思うのかを数回繰り返し、深く考える癖を身につけさせることが有効です。人との対話、そして自らとの対話を繰り返すことで、課題を深く理解した上での要素の繋がりまで説明できるようにトレーニングされます。
すると、漠然とした「分からない」が、「何が問題なのかは理解しているがその答えが分からない」といったように、解決策がスムーズに思考しやすくなります。これらを繰り返し、知恵として身につけることで、力となります。

課題を解く力
課題が明確になっている前提ですが、まずは課題の要素を切り分けていきます。そのうえで、それぞれの要素について解決可能なものから策を講じ、残った要素(課題の核心)をみつけ、そこへの解決策構築に集中するように促しましょう。
解決できなかったとしても、改めて課題を見つけるところから繰り返すことで、どのような対処法が有効か想定できるようになり、変化球への対応力も増します。煮詰まってくるようでしたら、俯瞰したものの見方を教えることで、多角的なものの見方に発展するかもしれません。タイミングを見て働きかけていきましょう。

諦めない執着心
考えたうえでの結果として、成果が得られたという満足感と幸福感を感じてもらうことです。先ほどの2点「課題を見つける力」「課題を解く力」のプロセスを経て得られた高い成果に対しては、きっちりと良い評価を提示してください。
自分自身で思いつき、自分の判断で行動していると感じることが、人間の行動力を引き出す上でとても大切なことです。そのため、コーチングスタイルの指導がとても有効です。
また、成果がなかなか出ないとしても、自ら考えているようであれば、その時間は決して無駄にはなっていないと伝えることです。トライアンドエラーを繰り返した人間の方が、答えに深みがあり成果も持続しやすいためです。

そのうえで、ある程度成果が出せるようになってきたのちは、過去の成功体験にとらわれることなく、この3つの要素を繰り返せるように指導することも必要です。成功体験は体験という名の知識であり、大切なことはこのプロセス(知恵)であるということを、何度も伝えていくことが大切です。