【PPM関連】過去問1:平成27年度 解答


【問いの狙い】
プロダクトポートフォリオマネジメントについて、
それぞれのセグメントの理解に加え、方針の的確さを問いています。

問題児の選択、負け犬、花形、金のなる木の要素分析、方針の立て方についての理解ができていれば、易しい問題といえます。

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【解答】
アが正しい

ア:競争優位性を期待できない「負け犬」事業からの撤退の検討に加え、資金投入によって成長市場で競争優位の実現を期待できる「問題児」の選択が重要である。
→正しい
負け犬事業は、相対的市場占有率が低く、市場成長率も低い。
競合優位性が期待できないため、撤退を検討することとなる。
問題児事業は、相対的市場占有率は低いが、市場成長率は高い。
そのため、将来の花形、金のなる木と成長することで、競合優位性を高めることが期待できるが、実現可能性の高い問題児事業を選択することが大切である。

イ:競争優位性を期待できない「負け犬」事業からの撤退を進めるのに重要な資金供給源は「花形商品」の事業である。
→誤り
負け犬事業が競争優位性を期待できないということは正しい。
ただ、事業撤退を進めるのに重要な資金供給源は、金のなる木である

ウ:衰退期に入った業界の「花形商品」事業は、徐々に撤退してできるだけ多くのキャッシュを生み出させることが重要である。
→誤り
花形事業は、市場成長率が高い状況であるため、衰退期に入った状況ではない。

エ:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方では、資金の流入と流出は市場と自社事業との成長率で決まる。
→誤り
PPMでは、相対的市場占有率と市場成長率の二つの軸で事業を評価する。
相対的市場占有率が高ければ、資金流入が多く、
市場占有率が高ければ、資金流出が多くなる。

オ:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方は、外部からの資金調達を考慮していないが、事業の財務面を重視して事業間のマーケティングや技術に関するシナジーを考慮している。
→誤り
PPMでは、資金調達は金のなる木で行うことを想定しているので、前半は正しい。
PPMは、事業間のシナジーなど質の面での評価が弱いため、考慮はあまりできていない。

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【リマインド】
◎プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)の前提
・SBU(Strategic Business Unit 戦略事業単位)
特定の事業を中心として構成される、戦略策定のための単位

・PLC(Product Life Cycle 製品ライフサイクル)
製品が市場に投入され、廃棄されるまでの生命周期
(導入期、成長期、成熟期、衰退期)
→PPMとの関連
市場成長率という軸に密接に関連する。
1、導入期は市場成長率は未だ低い
2、成長期は市場成長率が高い
3、成熟期、衰退期は、市場成長率が鈍化している

・キャッシュフロー
企業内部への資金の流入額から、企業外部への資金の流出額を差し引いた差額

・経験曲線効果
製品の累積生産量が増加するに従い、一製品あたりの生産コストが一定の割合で減少するという、生産量とコストの関係を示す経験則
→PPMとの関連
相対的市場占有率という軸に密接に関連する
1、市場占有率が高いほど、累積生産量が多くなる
2、経験曲線効果が大きい
3、生産コストが低くなる
4、資金流出が少なくなる
5、キャッシュフローが増加する

◎PPMについて
市場成長率を縦軸(上が高い)、
相対的市場占有率を横軸(左が高い)とすると、

花形   | 問題児
ーー     ーー
金のなる木| 負け犬

◎セグメントカテゴリの内容
・花形
相対的市場占有率 高い
資金流入     多い
市場成長率    高い
PLC 成長期
資金流出     多い
→資金流出も資金流入も多く、キャッシュフローの源ではない
→成熟期となると、金のなる木へと移行、投資を継続し、相対的市場占有率を高める努力の必要あり
→問題児から花形、研究開発などにより直に花形となる可能性がある

・金のなる木
相対的市場占有率 高い
資金流入     多い
市場成長率    低い
PLC 成熟期
資金流出     少ない
→資金流入が多く、資金流出が少ないことからキャッシュフローの源となる
→獲得したキャッシュフローを、花形や問題児、研究開発への投資する必要がある
→市場成長率が停滞しているため、積極的な追加投資は控える

・問題児
相対的市場占有率 低い
資金流入     少ない
市場成長率    高い
PLC 成長期
資金流出     多い
→資金流出が多く、資金流入が少ないため、キャッシュフローがマイナス
→投資を行い、相対的市場占有率を高めることで、資金流入を増やし花形へ
→花形に育てるための選別が重要

・負け犬
相対的市場占有率 低い
資金流入     少ない
市場成長率    低い
PLC 衰退期
資金流出     少ない
→資金流入、流出共に少ない
→基本的には撤退、他の事業での有効利用を図る
→売上規模は小さいが、資金流出は少ないため、利益率が高い事業となる可能性はある。

・PPMの課題
企業の経営資源を財務資源という観点からしか捉えていない
各SBU間のシナジーといった質的な面での評価が軽視されやすくなっている
PPMはすでに展開したSBUの分析、新規事業の展開への方針にはなりにくい
負け犬に配置されたSBUの士気が低下するおそれがある
金のなる木への投資が行われないため、衰退が早まる可能性がある。

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